ウクライナ言語事情
今日は、
他の文献から非常に面白いウクライナの言語事情を見つけたので
それを参考にウクライナの言語事情を知って貰いたいと思う。
ウクライナ言語事情
ウクライナ語は、ロシア語と同じく、インド・ヨーロッパ語族の一派である
スラブ諸語の東方グループ(東スラブ諸語)に属しているで、
ロシア語とよく似ている。
しかし、それぞれ1000年以上もの間、異なる変化をを遂げて来たので、
相違点もかなりある。
後年、ロシアとウクライナが支配民族・被支配民族の関係になった時、
大国ロシアから見れば、ウクライナ人は「くずれたロシア語」を話す民族だったが、
ウクライナ人から見れば、当然自分たちの言語は、「崩れたロシア語」なんかではなく、
「ウクライナ語」だった。
つまり、ウクライナ人は、支配者の言語に近い言語を話す被支配民族だった。
そして、その後のほとんどの期間、ウクライナ語は虐げられ、
表面上は瀕死の状態に見えた。
しかし、実際はウクライナ人の母語は生き長らえていた。
ソ連の頃は、ウクライナでも、ロシア語のが出来なければ、希望の職業に就くことが困難だったので、ウクライナ人であっても、親たちは子供をロシア語学校(ロシア語で授業を行う初等中学校)に入学させる傾向が顕著であった。
一方、現在では、逆に、ウクライナ語が出来なければ、希望の職業に就く事が出来ない地域もあるので、ウクライナに居住するロシア人の中には、子供をウクライナ学校(ウクライナ語で授業を行う初等中等学校)で勉強させ親達も出て来ている。
ところで、ウクライナはウクライナ人の国家であるが、ロシア人など他民族も多く居住している。
これは、主として現在のウクライナの国土には、ウクライナ人が元々居住していなかった地域が含まれてる事による。
ウクライナ人が元々居住していた地域は、西部(リボフ、ジトーミルなどの都市を含む)、
中央部(キエフ、ポルタバなどの都市を含む)及び東部(ハリキフ・ドネツクなどの都市を含む)
であるが、そのうち東部はロシア帝国の時代から、ロシア人が多く流入して来た地域である。
一方南部の(オデッセイ、シンフェローポリなどの都市を含む)は、ロシア帝国がクリミア・ハーンを国を合併してから、ロシア人を中心とした植民が行われた地域である。
以上の事から推測出来る様に、ウクライナ東部と南部は、ウクライナに属しているが、
ウクライナ人の人口が少なく、国家への帰属意識も弱い地域である。
そして、ロシア語が優勢な地域でもある。
ウクライナ国内を少しでも旅すれば分かる事だが、西部、中央部などのもともとのウクライナ人の居住していた地域であっても、とてもひとつの国家とは思えないくらい大きな地域差をもっている。
ポーランドに支配されていた地域、オーストリアに支配されていた地域、ロシアに支配されていた地域、それぞれに支配者の影響を色濃く受けている。
特に地域差が気になるのは、言語と宗教であるが、ここでは言語に限定して述べる。
ウクライナ国内、どの町でも、看板や標識の殆どはウクライナ語である(東部、南部では、ロシア語が併記されている場合が多いが)。
しかし、街中で人々が話している言語に関して、単純化して言ってしまえば、西部はウクライナ語、中央部はウクライナ語とロシア語が半分半分、東部はウクライナ語訛りのロシア語、南部はロシア語である。
このうち、西部のウクライナ語は、ポーランド語からの借用語が非常に多い。
また、中央部では、官庁や大学などの公の場で、もっぱらウクライナ語が話され、ロシア語が使われる事は少なく、現在ウクライナ化(ウクライナ語・ウクライナ文化・などウクライナ人に関わる全てのウクライナ的なものを伸張させようとする動き)が急速に進んでいる。
これは、ウクライナ東部での話だが(他の地域の事は確認していないが、もしたらウクライナ全土でも同じ事が起こっていたのかもしれな)、ウクライナ独立後、一時期、テレビやラジオでは、ウクライナ語の放送だけになったが、直ぐにロシア系住民の反発により、直ぐにロシア語放送が再開された、と言う事があった。
それはともかく、テレビでは、国家語であるウクライナ語を普及させようとする国の政策も絡んで、どの地域でもウクライナ語の方が多く使われているが、まだロシアのテレビ局の番組も見られる状況なので、ほぼ2語併用と言っていいだろう。
あるテレビ局の音楽番組で、司会者がロシア語で、出演者のアーティストがウクライナ語で、
トークしていた。 二人ともロシア語とウクライナ語のバイリンガルとまでは行かないが、多くの人は、聞けば大体の事は分かるのであろう。
一方、新聞は個人が毎日購入するものなので、あたりまえの事だが、ウクライナ語を日常使っている地域ではウクライナ語新聞、ロシア語を日常使っている地域ではロシア語新聞が圧倒的に多く売られている。
この様に、ウクライナは、一つの国家ではあるが、言語ひとつとってみても、統一性に欠けている。 今後、東部、南部でもウクライナ化が進むかも知れないが、国家分裂の危機が無いとも言い切れない。
さらに、ウクライナはロシアとEUの狭間にあって、今後進むべき道を模索している段階である。 今後、政治、経済などのあらゆる面でウクライナの動向には注目して行かなければ成らないであろう。 寺田吉考
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